活性酸素と抗酸化栄養素食品 ピクノジェノール

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はじめに

ピクノジェノールは、松の木の1種パイナス・パイナスター(フランス海岸松)から抽出される植物化学物質である。フランス海岸松は、フランス南西の海岸沿いにのみ生育する。ピクノジェノールは、モノマーとオリゴマーのプロシアニジン、フェノール酸(安息香酸と桂皮酸の派生物)を標準化した調合物からなる。(ロドワルド、2002)。ピクノジェノールは、ホーファーリサーチ社(本社スイス・ジュネーブ)の登録商標で、その鑑定と分析は、アメリカ薬局方に記載されている(USP2003)。
ピクノジェノールは、抗酸化作用、タンパク質結合作用、内皮の一酸化窒素シンターゼ作用における多様な健康効果があるため、世界中で、栄養補助食品、食品添加物として使用されている(ロドワルド、2002)。ピクノジェノールを含んだチューインガムは、以前に行われた普通のチューインガムとの二重盲検プラセボ対照試験で、歯肉出血と歯垢形成を軽減させたことが明らかになっている(Kim−brougbら、2002)。後者の効果により、ピクノジェノールの成分が、静菌作用を持っている可能性が示唆され、このことが、当研究の推進力となった。
ピクノジェノールの抑制作用に必要な最低用量を確立するために、標準の検査手技を用いて、グラム陽性、グラム陰性両方の細菌、酵母、菌類を幅広く試験した。

方法

ピクノジェノール、フランス海岸松樹皮エキスは、ホーファーリサーチ社から提供された。標準化された抽出物は、アメリ丸薬局方(USP)の国民医薬品集のモノグラフ“海岸桧抽出物”に該当する。
試験された菌株は、当研究所内(バルセロナ大学の獣医学部=FVB)あるいはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手した。
供試生物のピクノジェノールに対する感受性は、液状での直接接触により測定された。全ての実験は、3回行われた。
試験された菌株は、培養から集菌、洗浄され、培養基の中で2×10 CFU/mLになるように薄められた。
試験管には、培養基(ミューラーヒントン寒天培地)を入れ、試験する微生物1叫を堰博した。菌類の場合、Shadomy agarに2%の麦芽エキスを加えたものを使用した。ピクノジェノールの連続希釈法の用意をし、15uLを試験管に加えた。培養基のサンプルを試験前に取り、5分後、60分後、2時間後、1週間後、2週間後にもサンプルを搾取した。100uLのサンプルを、シャーレーのTrioptone Soy Agarに加え、37度で24時間(酵母と細菌)あるいは28度で5日間(菌類)さらに培養した。シャーレー毎のCFUを数えて、対照と比較し、抗菌作用を評価した。生き残った菌の%を、ピクノジェノールなしの対照混合物と比較して示した。培養液内の実験により、微生物の成長を抑制するのに必要なピクノジェノールの最低用量を確立することが可能になる。さらには、これからの試験により、ピクノジェノールの抗菌作用の可能性を反証することも可能である。

結果と考察

ピクノジェノールは、グラム陽性、グラム陰性両方の菌株に対しての顕著な静菌作用があることがわかった。さらに、ピクノジェノールは、酵母(カンジダ菌)、糸状菌などの真核微生物の成長を抑制するのにも効果があった。
ピクノジェノールを含む雛の希釈物は、微生物の増殖を再開させたため、ピクノジェノールは殺菌作用を示さなかった。
これらの試験からは、ピクノジェノールの抗菌作用の性質に関する結論は、導き出せない。グラム陽性、グラム陰性の菌種に反映されているように、MID値と細菌膜構成の間には、相互関係は見られないようだ。其核微生物は、原核生物については、同じMID範囲内において、成長が抑制され、ピクノジェノールが共通のメカニズムで他の全ての試験し孝微生物の成長も可逆的に阻むことを示唆している。
一般的に、ポリフェノール物質は、さまざまな植物源のに由来し、(Cowan 1999)が概説しているように、糸状菌、酵母、細菌の成長を抑制することが示唆されてきた。これらの研究では、ポリフェノールが、水素結合、疎水性相互作用でタンパク質と複合することで、抗菌作用が起こると推測されている。
この複合の結果、微生物付着、酵素、細胞外被運搬体タンパク質などが、相性になり、細胞周期が、阻まれるのかも知れない。
これらの観察結果は、ピクノジェノール含有の無糖ガムを噛むことで、人体における歯垢形成を抑制したという前述の観察と合致する(Kimbroughら、2002)。歯磨きをさせないようにプラスチックのステントをはめた被験者に、無糖の対照となるチューインガムあるいは、市販のものにピクノジェノール5mgを入れたチューインガムを1日6個2週間続けて噛んでもらった。対照グループでは、かなりの量の歯垢が溜まったのに対し、ピクノジェノール含有のチューインガムを与えられたグループは、全く歯垢が溜まらなかった。
未発表の報告では、喉のカンジダ症を患う免疫不全の人にピクノジェノールのタブレットを日中に数個、少量の水と一緒に噛ませた事例が示されている。治療1ヶ月後、感染症は完治した(Dr Michael A Ross、Victoria CA、personal communication)。
結果としてピクノジェノールは、微生物増殖を制御する興味深い成分の可能性がある。この研究で、最も耐久性のあった菌株、カンピロバクー種は、効果的に成長を抑制するのに、250ug/mLのピクノジェノール濃度を必要とした。つまり、0.025%のピクノジェノールを含む処方で、全ての微生物に対する抗菌作用をもたらすのである。

参考資料

1)cowan MM.:「抗菌薬としての植物生成物」、Clin Microbial Rev 12、564−582(1999)
2)Kimbrough C、Chun M、de la Roca G、Lau BHS.:「ピクノジェノールチューインガムによる歯肉出血と歯垢形成の抑制」Phytomedicine 9、41M13(2002)
3)Rohdewald P.:「フランス海岸松樹皮エキス(ピクノジェノール)の概説:.多様な臨床薬理学を用いたハーブによる薬物療法」、Int J Clin Pharm and Ther 40、158−168

ピクノジェノールの抗菌作用

教養ある喫煙者はほとんど喫煙がもたらす危険について良く知っているが、ニコチンに中毒作用があるため、彼らでも禁煙をすることが極めて難しい。
重要な点として大多数の疫病学的研究は、喫煙が原因となって、心臓血管系の病気や卒中、肺がん、急性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(CPOD)や肺気腫が起こるとし、その因果関係を指摘している(Tonnesen and Vermeire、2000)。
喫煙は、また、不可逆的失明の最も一般的な原因となる加齢性黄斑変性症の発症率を高める(Chan、1998)。喫煙は喘息と糖尿病を悪化させる(Traberら、2000)。さらに喫煙は喉頭がん、口腔がん、食道がん、すい臓がん、勝胱がんそして肺がんの危険を増大させる(Nair and Brandt、2000)。
喫煙に依存性が生ずるのは、ニコチンのせいであるとされてきたが、ニコチン自体は発がん作用を持たないと考えられている。喫煙の毒性と発がん性はタバコが燃焼している間に生じる様々な副産物に起因する(Tonnesen and Vermeire、2000)。タバコの煙は4,700以上の化学成分からなる複雑な混合体であり、その中には高濃度の活性酸素やその他の酸化体が含まれる(Bluhmら、1971;Church and Pryor、1985)。タバコの煙はガス相でもタール相でも活性酸素を含んでいる。ガス相における括性酸素は、しかしながら、反応性が極めて高く、タバコ用のフィルターでは不活性イヒすることが極めて困難である。
タバコの煙から発生する活性酸素は、喫煙によって誘発される肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患や肺気腫や肺がんなどの病因の1つであると指摘されてきた(Rahman and MacNee、1996)。タバコの煙から生ずる活性酸素は、慢性閉塞性肺疾患を患う喫煙者の体内における炎症を克進させる作用がある。これは、炎症作用を促進する伝達物質であるプロ炎症ミディエーターの発現と保護作用を持つ抗酸化遺伝子の発現を制限する転写因子が活性化するためである(MacNee、2000)。